9. 外国語の学習支援とその周辺

自然言語処理の研究成果を応用して,外国語学習の支援を実現します .

基盤となる自然言語処理技術は,

難しい言葉をやさしく言い換える」技術

などです.

難しい言葉をやさしく言い換える

外国語を学習する人が,外国語の文章を読もうと思ったときにぶつかるのが言葉の壁です.ここで,難しい言葉に対してやさしく言い換えた例を提示してあげることができれば,すらすら読めるようになるので,学習の効率もアップします.ここでは,日本語学習者を対象に,このような言葉を易しく言い換える研究について説明します.以下のリンクをクリックすると,スライドによるわかりやすい説明を見ることができます.

形容詞の言い換え

以下の「言い換え例」のように,「迅速な」→「すばやい」というひとつの言い換え例をうまく利用して,「迅速な」のあらゆる派生的表現を「すばやい」の派生的表現に言い換える原理を確立しました.

keiyoushi

複合語表現の言い換え

意味の等価性を保存して,慣用句や複合辞(機能表現)を自由自在に言い換える方式について研究します.

fukugougo

文末表現の言い換え

話す相手に合わせて,上司には丁寧に,部下にはフランクに,そんな風に自然な会話文が生成できるようになりました.近日中に説明を掲載する予定です.

bunmatsu

「〜について」「〜において」のような日本語の表現(機能表現)の言語処理基盤

上記の「〜にもかかわらず」「〜について」「〜において」のような表現や, 「〜てほしい」「〜てくれ」「〜ていただけませんか」のような文末表現を 総称して,言語学では機能表現と言います. それらの機能表現は,種類が多く,バリエーションも多いので,日本語を学習する人にとっては,習得が大変難しいといわれています.

例えば,「にとって」という表現をがんばって覚えても,実際には,「にとり」や,「にとってみれば」など色々な形があるので,そもそも,これらが「にとって」のバリエーションだと気づくことができないかもしれません.気づいたとしても,これらが「にとって」とどう違うのかを知るのは難しいことです.

そこで私たちは,それらの機能表現に焦点を当てて,包括的な言語処理基盤を作成するための研究を行って 来ました.

一例として,日本語の全機能表現を対象とした辞書: つつじの意味的等価クラスを用いることにより,日本語の全機能表現を少数の規則で英訳する方式について研究を行っています.

日本語の全機能表現を少数の規則で英訳する

日本語学習支援システム

また,私たちは,実際に,留学生が日本語を習得する過程を支援するためのシステムの構築に関連して, 東京国際大学の川村よし子先生の リーディングチュウ太という日本語読解支援システムに対して 研究協力を行いました.

リーディングチュウ太は,下図のように, 辞書検索作業を支援したり,語彙・漢字の難易度を表示したりする機能を持った日本語読解支援システムです.

tyuta goi-hantei kanji-hantei

辞書を表示しているところ
語彙の難しさを表示
漢字の難しさを表示

私たちは,このリーディングチュウ太に対して,機能表現の習得を支援するための機能を追加しました.

tyuta

また,難解な表現に対して平易な言い換えを提示するための機能を追加するという研究に取り組んでいます.

対話技術の利用

また,自然言語処理における対話研究の成果を取り入れ,学習者の知識構造を把握しながら, 学習者の知識に沿って,最適な学習戦略をとる方法について研究を進めます.
この研究では,エンターテーメントコンピューティング研究室のゲームコンピューティングの基盤プラットホームを用いて、 ロールプレイング形式の外国語学習モデルを作成します.